ぎんざ姿の食材

一般の方が気をつける事-ふぐ の 毒 夜話 3

    実は、一般の方が、一番ふぐに触る機会が多いのが、釣りによる収穫です。

    釣りの真っ盛り、夏場には、いろんなふぐが採れるんですね。

    ところで、どのふぐか判らずに、さばき方だけ知っていらっしゃると、何が起きるか?

    そんなお話を、下の動画でしております。

    ふぐの毒 夜話  と題しまして、ぎんざ姿 オーナーが語る、ほぼ、声だけの 動画 をアップしました。

     

    以下、youtubeでお話しました、そのお話の その3 の、本文でございます。

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    一般の方が
    ふぐ食で、気を付ける事

    Things to be careful about when eating fugu

    さて、

    東京都で、食用と認めているふぐの種類は、とらふぐをはじめ、およそ30種類強。

    一般に養殖されているふぐは、最も味が良いとされる、

    とらふぐを養殖するのが、当たり前になっていますから、

    現在流通している養殖フグは、ほぼ、100パーセント、とらふぐです。

    ふぐと呼ばれる魚には、一般に、肝臓と卵巣に毒があるのですが、

    ふぐの種類によって、皮に毒があったり、完全に無毒だったりします。

    また、海域によっても、毒がある場合、ない場合があって、

    同じ種類のふぐでも、毒があったり、なかったり、するわけです。

    先に書いたことと重なりますが、

    素人の方に、ふぐで最も気を付けて頂きたいことは、除毒の技術より、実はむしろ、

    「判別」と、「以前の経験」ではないか、と私は思います。

    まず、「判別」です。「鑑別」とも言います。

    何度か、海で遊んだり、漁船に乗せてもらったりすると、わかりますが、

    日本近海は、毒魚だらけですね。

    ふぐのほかに、毒のトゲがあったり、牙がすごかったり。

    食べちゃダメな生き物が、たくさんいます。

    でも、ほら、お魚屋さんに、並んでないでしょ?

    たまに、シラスにふぐの幼魚が入っていた、って、大々的なニュースになりますが、

    生産者の方とお友達の、私が、申し上げるとー、

    そりゃ、イケなんでしょう、イケないんだけどね、

    食べられない海産物の量を考えたら、よく、このくらいで済んでいるなー、と。

    すべて、食べられないものをどけて下さる、

    漁師さんや、産地さんがいらしてくださるから、なんですね。

    そうした、一般の方が、それでも、食べられるふぐか?と悩むのは、

    ほとんどが、ご自分や、お知り合いが持ってきた、

    「釣り」で、手にする機会だと思います。

    先に、ふぐには食べられるふぐだけで、30種以上ある、と申しました。

    食べられるふぐにしても、

    種類が違うと、食べられる部位も違います。

    問題は、その種類をどうやって見分けるか、です。

    例えば、マフグの幼魚はショウサイフグにそっくりだったり、大変まぎらわしい。

    死んで時間が経ったクサフグは、トラフグによく似ています。

    外見が似ているからと言って、クサフグの皮を食べたりしたら、猛毒です。

    また、鑑別に関連したお話で、

    このふぐは皮に毒がある種類だと、分かっている、

    だけど、ひれ酒だったら大丈夫だろう、と聞いていらっしゃる方もいました。

    私、慌ててお答えしましたが、

    ヒレ酒、って、ヒレを使うんですよね?

    ヒレは、骨の周りに皮が付いていますから、絶対アウトです。

    種類で、まず、わからない、

    種類がわかっても、どう調理したら安全か、また、分からない。

    こりゃーたいへんだー。

    私は、東京都のふぐ調理師試験の試験官を、これまで何度か、させて頂きました。

    東京都側の試験の点数配分については、私にも、シークレットなのですが、

    私たちがふぐの組合で毎年実施している、ふぐ調理師の模擬試験でも、

    毎年、判別で間違える方が続出します。

    日頃魚を捌いているプロでも、間違える判別です。

    そして、中途半端にご存じだと、これがまた、危ない。

    ふぐはね、活きている間に捌かないと、

    内臓の生臭さが体にすぐ回って、食べられたものではなくなる魚です。

    ま、それが、日本以外の国では、

    ふぐは美味しくない魚だと、近年まで言われてきた理由ですが。

    ふぐが鑑別できずに、そうしたことを知っているとね、どうなるか。

    釣ったら、すぐ、さばかなくっちゃ、と気持ちは逸りますよね。

    でも、ふぐは、皮をむいてしまったら、

    外観だけでは、種類はほとんどわかりません。

    釣りですから、どんなふぐが釣れて来るかわからない。

    釣ったふぐの中には、

    最近急に出てきた、混血ふぐ、「ミックス」だったりも、あります。

    揺れてる船の上で、

    照り付ける日差しやら、夜釣りの灯やらを背に、釣った魚を正確に鑑別する。

    慣れない事、慣れない魚、慣れない人、で、

    慣れないものだらけになりますから、

    一般の方が、間違わずに鑑別して、毒のある部分だけを除くことができるとは、

    失礼ながら私には思えません。

    なまじ知れば、よけいに分からなくなる、

    それが、ふぐの鑑別がよけい難しくなっている原因でも、ございます。

    釣りが趣味の方から、私、

    よく、ふぐの捌き方を尋ねられるんですが、

    ふぐの種類がわからないで、さばき方だけ知っていたらー

    おっかないですよねー

    次に、「以前の経験」です。

    ふぐは、食べたものから、毒素を体内にため込むことがわかっています。

    と、言うことは、毒素が体内にあるふぐも、ないふぐも居る。

    これを、我々、食べる側に言い換えれば、

    「この間食べたふぐは大丈夫だったから、自分は平気」

    というのは、当てにならないのです。

    ふぐの毒は、精製毒は青酸カリの何百倍、とか、言いますが、

    ふぐの体内では、そこまで濃くはなくて、

    粗毒と呼ばれる、不純物も混じった状態で、存在しています。

    それが、個体ごとに、違う、というのだから、

    いわゆる、毒を測る物差しのないのと、同じなわけです。

    少々、突っ込んだお話をしますと、

    ふぐの毒について、科学的に評価された単位として、

    MU、という単位がございます。

    これ、「マウスユニット」と読みまして、

    もっと興味のある方は、「マウスユニット」で検索すると、どんどん出てきます。

    1MU=体重20グラムのマウスに、フグ毒では30分で死亡させる毒の量

    組織1g当たり10マウスユニットを超えるものは食用不適

    保健衛生の関係の本はね、

    きちんと読もうとすると、たいていは、頭がクラクラしてきます。

    ふぐ試験の教科書にも、掲載されておりますが、

    昭和30年代に、実際にマウスで実験して示された数字を、

    現在でもそのまま使っています。

    実験に供されたマウスたちのおかげで、私たちはふぐを安全に評価できるわけです。

    ふぐ料理を、関西では「てっさ」「てっぴ」「てっちり」などと呼んでいますが、

    この「てっ」ってのは、何か、と申しますと、「てっぽう」の、意味だそうで。

    確かに、江戸時代までの照準の甘い鉄砲なら、

    「当たらない時もあるが、当たると死ぬ」というのも、頷けますね。

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