料理人と囲む、魔法の接客
オーナーの熊澤でございます。
特にご接待のお席で、私のような者が重宝される事について、お話いたしますね。
と、申し上げておきながら、マイナスな切り出しで恐縮ですが、
私は茶道の心得がございません。
それが、ひょんなことで、表千家のとある茶席にお招きいただいた際の事です。
にわか仕込みで、汗だくだくに、お点前を頂戴した後、
お師匠様とお話しした際のこと。
「お茶席では、主人は黙っているわけではないですよ、
時にはずいぶんと、にぎやかです。
ただ、主人はお茶にまつわるお話だけをするんです。
なのに、お客人と主人とが、心が通い合ったり、和やかな雰囲気をみんなで楽しんで。
とっても、不思議。魔法みたい。
ーお料理のお席の時のあなたと、似てるでしょ?」
と、お師匠様。
ああ~~、そういうことだったのか、と、
そのお言葉で、一人、合点いたしました。
心の鍵が、ひとりでに開いて、ほぐれてゆく
私はよく、お客様とのご宴席で、お料理やふぐのお話をしながら、
注意深く、心の鍵をさがしてゆくと、
皆様の心がどんどんうちとけて、開かれてゆくのを感じます。
どういう事でしょう?
もう少し噛みこんで、ご説明いたします。
ご接待や折衝の場を、争いなく穏やかに取りまとめるのに、
お互いの話題に無関係な、風流事のプロに、あえて同席してもらうと、
とても簡単に話がまとまる。
困ったときや、話が止まりそうな時に、
ふ、と、その風流人と別の事を話す。
と。話がすうっ、と動き出す。
日本人が昔から知っていた、折衝の仕方です。
お茶の席だけでなく、レストランなどの場でも、そうした人物が居ると、とても心地よい。
それが、接客の理想の姿と信じて、私も日夜、料理と同じく、精進しているのですがー。
本当に、魔法みたいですよ。
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