ふぐのおいしさは、召し上がり始めて5分で、幸せがやってくる味。その1

当店のふぐ料理を召し上がり始めて、約5分。幸せがやってきます。
オーナーの熊澤でございます。 キャッチコピーには長すぎるお題で、失礼いたします。
当店で初めてお食事されるお客様は、 最初のひとくち目で、「美味しい!」と、喜びを表すお客様よりも、 何と申しましょうか、 召し上がりだして、5分程度した頃から、じわぁ~~っと、口角が上がってくるお客様や、 同じ時間経った頃、急にお箸のペースが上がるお客様のほうが、確実に多いのではないかと存じます。
まるで、最初は気が付かなかった幸せが、やって来たような。

ふぐの味は「幸せ」で形容されやすい
「私はふぐの味は解からないんだけどね、この店のふぐを食べるとね、すごく幸せになるんだよ」 と、当店の、とあるおご常連客様は仰ります。
ゆめゆめ、ふぐの味が解からない方ではない、味をよくご存知のお客様ですから、ご謙遜のお言葉から、 褒められすぎと存じますが、「幸せになる」とは、とても不思議な表現です。
そのほか、 「食べないと淋しい」、「ふわぁっとくる」、など。 「天然のほうが養殖より幸せ感が強い」、とおっしゃる方もいらして、 当店のふぐ料理の味を、幸せに関する形容詞で表現される方は、とても多いです。
さていったい、この「幸せ」とは、どんな味なのでしょう?

ふぐの旨みは、シチュー系?
和食の旨みは、舌先にすぐ感じられる、鰹だしやお茶など、揮発性の物が多いのが特徴だと伺いました。
その和食の代表格である、ふぐの旨みですが、 毎日、ふぐを調理している私が、僭越ながら申し上げるに、 ふぐの旨みの種類は、他の和食とは少々違って、 むしろ、ビーフシチューなど、じっくりと煮出す料理に多い、ブイヨン系の味わいではないか、と存じます。
もう少し詳しく申し上げるなら、 それ自体は、はっきりとした味を持たないが、ハーブやスパイスで輪郭を作ると、 俄然、素晴らしい旨みを放つ、よくできたスープストックのような。
それで、ふぐの漠然としながらも素晴らしい旨みを、「幸せ」とおっしゃるのか、と。
そして、その旨みが、他でもない、ポン酢でよく引き出される、という点は、 まさに、「ふぐならでは」の特徴かもしれません。